これって本当に不便? 田舎にある集合型新聞受けの大切な役割とは?

地域の支え合いのヒントは福島県昭和村に! 集合型新聞受けが持つ大切な役割とは?

新聞を取っている人は毎朝、当たり前のように自宅の郵便受けに新聞を取りに行きますよね。福島県昭和村では、集合型の新聞受けに決まった時間に村民が自分で新聞を取りに行きます。一見不便かと思われるこの『集合型郵便受け』。実は地域のために大切な役割を担っているんです。

1.村の一画に地域住民を繋ぐ見慣れないモノ。

福島県昭和村の風景
ここは福島県昭和村の野尻地区。この何気ない村の日常風景の一画に、地域の住民を繋ぐ大切なヒントが隠されているんです。右手に見える蔵にもう少し近づいてみると、見慣れないモノが設置されていることに気がつきます。

田舎の集合型新聞受け
実はコレ、各家庭の新聞を配達するための『集合型新聞受け』なんです! よく見てみると、名前の上についている「友・報・産・農」などは各新聞社の一文字(福島民友・福島民報など)。そしてその下には、世帯主の名前が書いてあります。この地域では同じ名字の方が多いので、名前の方が分かり易いんですね。

珍しそうに新聞受けを見ていると、「なんだ見た事ねーのかよぉ?」と逆に珍しがられます。

昭和村では新聞を各戸に配布するのではなく、毎朝決まった時間になると、新聞屋さんがここに置いた新聞を取りに来るシステムになっています。しかしここで1つの疑問が浮かび上がります。高齢者率の高い昭和村で、なぜ各戸配布ではなく集合型の新聞受けが利用されているのか?

2.集合型新聞受けがもたらすメリットは?

住宅街のアパート、マンションなどの集合住宅なら、新聞だけでなく郵便物を入れる郵便受けも見慣れたもの。もちろん昭和村の住宅も各戸に郵便ポストがありますが、自分で取りに行く昔からのこのシステムには、隠されたメリットがあるそうです。

村内の何カ所かに「集合型の新聞受け」がありますね。毎朝、同じ時間にこの場所にみんなが集まって来ます。「今日も元気だよ」と示すことができ、逆に誰も新聞を取りにこなかった家があれば、新聞届けに行きながら安否を気に掛ける・・。昭和村には、このように昔から住民が自主的に作ってきた暮らしの中の「支え合い」(自助・共助)の仕組みがたくさんあります。そのひとつひとつが”高齢になっても住み慣れたこの村で自分らしく暮らし続ける”ために必要な大切な「宝物」だと思います(引用:広報しょうわ 生活支援コーディネーター)

一見不便に見えるこの集合型郵便受けの裏側には、そんな「支え合い」の要素が隠されていたのです! これに着目すべきは、このようなシステムが、意図せずに暮らしの中でごく自然に確立されていたという点です。

3.当たり前が「宝物」。不便が生む地域の魅力。

昭和村の集合型新聞受け
地域の人が顔を合わせて見守り合う、助け合いの文化が自然と出来上がっている昭和村。高齢者率が高くなった今、その昔ながらの自然な当たり前が地域の「宝物」になっていると、昭和村の生活支援コーディネーターの方は仰います。

集合住宅でも隣人の顔を知らないなんていう事も当たり前の昨今ですが、昭和村にはこういった自然体の暮らしの魅力が多く詰まっています。不便のように思える事も、現代人には必要な要素が隠されているのかもしれませんね。

masaki umino
masaki umino
茨城県出身。大学卒業後、企業での営業経験を経て株式会社SATORUの創業メンバーとして参画。2017年に福島県昭和村へ移住後、地域活性化プロジェクト「SHARE BASE Project」で自社サービスの開発・運営・管理や各種ディレクション、webライティングを行っている。