滅多に見られないインフラ工事現場! 福島県昭和村で、貴重なトンネル工事現場の見学へ。
普段何気なく通過しているトンネル。皆さんはそんなトンネルがどうやって出来上がっていくのか、見たコトや考えたコトはありますか?
現在福島県の会津地域では、昭和村と会津美里町をつなぐ、福島県管理道路において最長のトンネルとなる『博士トンネル』の建設工事が進行中!! 滅多に見られないトンネルの建設現場の見学会へ行ってきました!
1.町と山村を繋ぐ、『博士トンネル』とは?
この標高1,000m級の山々に囲まれた山村の風景は、福島県大沼郡昭和村。山に囲まれたこの村から、都市機能や救急医療施設のある会津若松市へは、現在『博士峠』という曲がりくねった山の中の道路を通る必要があります。
ところがこの博士峠、積雪による雪崩などの危険性により、冬季は閉鎖されてしまうのです。開通している時期にも、道幅が狭く車同士がすれ違いにくい上、急勾配、急カーブなどにより、救急車両などはあえて緩やかな道路に遠回りする必要がありました。
その交通の不便を解消する『博士トンネル』の開通は、福島県の会津地域の産業の振興や、医療機関へのアクセスにおいて非常に重要な役割を果たすトンネルになることが期待されています!
2020年に開通予定の『博士トンネル』。その長さは4503m、福島県管理道路では最長のトンネルになるとのこと!
2.トンネルはどうやってつくられるのか?
トンネル開通までの工程は、①準備 →②掘る・削る →③ずり出し →④コンクリート吹き付け →⑤ロックボルト →⑥防水シート張り →⑦コンクリート覆工 →⑧舗装 →⑨設備工事 →⑩完成という一連の工程があります。
②から⑤までの工程を繰り返して、どんどんトンネルを掘り進めて行くんです! ②から⑤までの工程は、1回につき1メートルの距離で進みます。1日でこのサイクルを5回〜6回繰り返すので、一日あたり5〜6メートルのトンネルが掘られていくことになります。
今回はその作業の途中を見学できるということで、昭和村の方々と見学に行って来ました!
(※この見学会は7月下旬のものです。)
3.巨大な機械が往来する、大迫力の博士トンネルの工事現場見学へ!
●まずは見学にあたっての説明と注意事項を聞く。
トンネルに入る前に、ヘルメットとマスクが配布され、注意事項やトンネル工事の工程説明を聞きます。トンネル内は滑りやすいのとぬかるみもあるので、長靴は必須!
●トンネル工事現場へ向かって出発!
説明を終えたら、隊列を組んでトンネルへ歩いて向かいます。作業者だけでなく、見学者にも向けた安全対策が徹底されているのが素晴らしい!
●大迫力のトンネル入り口に到着。
いよいよトンネルの前に到着。普段は車で通り抜けるだけのトンネルも、近くでじっくり見るととてつもなく大きいのは、写真を見てみれば一目瞭然! トンネル工事現場を見るのも貴重ですが、歩いて通るのも貴重です。
この緑色とシルバーのダクトは、トンネル内部に新鮮な空気を送り込むための極太配管。奥に行けば行くほど空気の循環ができなくなるので、作業者にとって必要な安全対策です。
トンネル内部に入ってみると、ダクトが奥までずっと伸びています。内部は少しひんやり、作業をする音が響き渡っています。地面はまだ舗装されていないので、滑りやすくぬかるんでいるところが多い状態です。
こちらは作業工程⑤のロックボルトについての説明を受けている様子です。4mほどのボルトをトンネル内側から地山に打ち込み、トンネルと地山を一体化させるもの。
このトンネルの工法は、『NATM(ナトム)工法』と呼ばれています。
由来は、New Austrian Tunneling Method(新しいオーストリアのトンネルを掘る方法)で、掘削直後に地山に密着するよう吹き付けコンクリート及びロックボルトを打設することによって、本来の地山の有する保持力を利用してトンネルをつくる工法です。日本では1970年代より山岳トンネルの主流の工法になっているんです。
●まるで映画の世界! 巨大な工事車両がズラリ!
トンネル工事見学の醍醐味は、普段は見ることのできない男心くすぐる巨大な工事車両にもあります。トンネル内には、巨大な工事車両が何台も往来していて、まるでトランスフォーマーの世界!
掘削した後の土砂を運ぶホイールローダーの大人の背丈近くあるタイヤは、頑丈な鎖で巻かれています。運んだ土砂を横に流せるように、ピックアップ部分の片方が開けているのも特徴。
他にも、内側にコンクリートを吹き付ける車両や巨大な粉塵機、ロックボルトを打設するためのホイールジャンボなど、普通では見られない工事車両が続々と出現! 車両が大きくて運転している人が見えづらいので生きているかのよう。
●トンネルの中で大きな車がどうやって方向転換するのか?
これだけ大きな車両が、トンネル奥深くに入って行った後にどうやって戻って行くのか気になりませんか? 長い距離をバックで進むわけにもいかないので、トンネルの途中には方向転換用のロータリーも備え付けてあるんです!
●コンピューターで管理して、トンネルの掘削状況をナビゲート。
さらにトンネルの上部には、実際の工事の様子をモニタリングしながら作業の工程を指示するための管理システムが吊られています。トンネルの掘削状況をナビゲートして、円滑な工事を進めるための大切な役割を果たしています。
●最後は見学した皆さんと記念写真。
一通りの見学を終えた後には、インフラ見学に参加した皆さんで記念写真をパシャリ。博士トンネルの全長4503mはまだまだ!博士トンネルの工事は、会津美里町側工区から2238m、昭和村側工区からは2265m、双方からのトンネルが出会うのは、もう少し先になります。
4.トンネル開通で期待できる効果とは?!
さて、2020年開通予定の『博士トンネル』。開通後にはどんな効果が期待されているのでしょうか?
●冬期間の通行止め解消、及び救急医療機関への搬送時間の短縮
博士峠が冬期通行止めとなっていることにより、救急搬送においても国道252号、磐越道を経由せざるを得なかったのが、トンネルを通行することにより距離と時間を大幅に短縮できるようになります。
整備後は会津中央病院まで、冬期は現在より26分短縮されることになります。救急搬送時においては相当な時間の短縮ですね。
●災害時の避難ルートの確立
トンネルを整備することにより災害に強い道路となり、災害時に信頼できる避難ルートになります。
●地域振興の発展
毎年通行可能で円滑な道路となるため、奥会津地域への交流が活性化され、地域振興の発展が期待されます。
さらに、この博士トンネルの開通に向けて、昭和村を始め奥会津地域の人々が地域振興の為に手を取り合い、魅力的な地域にしていこうという意識が高まっていることも事実。もしかすると、それが一番大きな変化をもたらすのかもしれませんね。
今後も博士トンネルを舞台にしたインフラツーリズムが開催されるかも? 貴重なこの機会に、ぜひ立ち会ってみてはいかがでしょうか。