この連載では、福島民報社の朝刊にて6回に渡り掲載された株式会社SATORU 海野によるエッセイを、写真を交えて改めてご紹介させて頂く企画です。
最終回は、地域の当たり前が宝物になるという発見と、株式会社SATORUのあゆみ、そしてこれからの挑戦についてのお話しです。
1.大切なのは、とことん遊んで学ぶこと。
私たちが昭和村に来てから積極的にしたことは、「とことん遊ぶ」こと。
仕事はもちろんですが、空いた時間や休みの日には至る所へ遊びに行きました。電波のつながる所であればパソコンで仕事ができるという特性も生かしつつ、春は庭先で、夏は湖で、秋は紅葉に囲まれてキャンプをしながら…。場所によってクリエイティビティや生産性が向上するなんてことも。
奥会津地域の宝探しをするように遊びまわることで、「こんな所だったら遊びに来たいよね!」というヒントが見つかっていきました。移住してから私たちが珍しがっていたことも、「当たり前のことが楽しいもんかねぇ」と言われることがよくありますが、それこそが地域の当たり前が観光になる原点です。地元の人たちの暮らしこそがその地域での生き方、楽しみ方のお手本となり得ます。
2.SATORUが取り組む、シェアベースプロジェクトの3つの軸。
私たちSATORUが取り組むシェアベースプロジェクトは、観光、産業、福祉という三つの軸から成り立ちます。
「観光」という軸からは、地域に埋もれている観光の可能性を見つけ出し、地域の魅力を発信すること。「産業」という軸からは、新たな産業の確立や、残すべき技術の持続に向けて取り組み、発展、継続を支援すること。「福祉」という軸からは、働き方、過疎、高齢化社会などの社会問題の解決に取り組み、地域の福祉に貢献すること。
これらは相互に関連し合い、地域の当たり前が観光と産業をつなぎ、産業を通して健康と福祉がつながり、また観光は福祉と地域に活力を与え、人同士の温かな関わり合いによって互いを向上させていきます。
3.積み重ねて来たものと、新しい挑戦。
これまで、古民家をセルフリノベーションで再生し、プロジェクトの拠点となる民泊施設「シェアベース昭和村」を立ち上げることで、訪れる人の数だけ夢も集まり、集落の方々だけでなく、近隣の市町村、県内外からもさまざまな思いや意見が集まるようになってきました。
活動とともに、自らが感じた暮らし・人・物・コトなどをピックアップして発信するWEB情報メディアサイト「シェアベースマガジン」を更新し、総記事数も500に達しようとしています。本プロジェクトではこれから新しいサービスが展開されます。新サービスは「SHARE BASE MATCHING(シェア・ベース・マッチング)」という体験マッチングサイトの公開です。
地域の当たり前である技の手本となる人と、遊びに来る観光の人とをつなぎ、各地のゲストハウスや民泊施設なども巻き込んだ、とっておきの「体験提供」ができる、遊び、暮らし、学びに寄り添ったマッチングサイトです。
既に近い要素を持つサービスも他で展開されていますが、ここでは独自の拡張機能を持たせ、掲載者と利用者がより身近に感じ、ワクワクするような要素を注ぎ込みます。もちろんこのサービスを広げていくには多くの方々のご協力が不可欠です。準備が整い次第、周知させて頂きたいと思います。
人は大人になるにつれて、自由な表現ができる場が少なくなるように思えます。子供のような自由な発想でもっと世界は広くなる。そんなことを考えながら明日もどんな一日になるか、朝が待ち遠しい日々を送っています。
(※この記事は、2019年4月18日に福島民報社にて掲載された記事の転載となります。)
◆第1回 『住めば都』。
◆第2回 『秘密基地づくり』。
◆第3回 『世代を超えて歩み寄る』。
◆第4回 『当たり前を疑う』。
◆第5回 『地元を想う』。