【SHARE BASE 連載エッセイ】 第5回 『地元を想う』。執筆者:株式会社SATORU 海野正輝

この連載では、福島民報社の朝刊にて6回に渡り掲載された株式会社SATORU 海野によるエッセイを、写真を交えて改めてご紹介させて頂く企画です。

第5回は、移住を通して改めて振り返る地元のことや、地元を想う人たちに出会って気づいたこと、自分の向いた方向に不思議と集まってくる人や情報についてのお話しです。

1.地元を離れて感じること。

毎年三月になると、自分の生まれ故郷を思い出します。梅の都と呼ばれる私の地元・茨城県水戸市では、「日本三名園」の偕楽園で、二月中旬ごろから三月末にかけて梅まつりが開かれいています。
偕楽園の景色
画像引用:水戸観光コンペンション協会

300ヘクタールの広さを誇る園内には、約100品種、3,000本の梅が植えられていて、各地から多くの人が訪れます。県の魅力度ランキングでは最下位クラスの常連となっている茨城県ですが、この時期ばかりはそんなランキング評価もどこへやら、地元民もその景色をひと目見ようとこぞって出向き、少し早いお花見とともに春の訪れを感じられる有数の景勝地となっています。これは長い歴史の中で現在まで毎年、約束のように地域の人や観光の人に咲いて見せては、変わらない水戸の景色をつくってきました。

私が地元を離れ上京してから13年がたちますが、守られてきた歴史的な風景とは打って変わって、商店街はシャッターが下ろされている所が増えていき、年を経るごとに少しずつ静かになっていく街の様子に何となく寂しさを感じずにはいられませんでした。

昭和村の景色
同時に、そういった状況とこれからを案じて、考えたり行動している人はいないだろうとも勝手に考えていました。そんなときに人口が圧倒的に少なくて、平均年齢も格段に高い昭和村に住んでみたら、そんな地元を案ずる気持ちが少し和らいだ気がするんです。

2.住んでわかる地域の見え方。

昭
昭和村では、これまで住んだ土地のどこよりも、地域の一員として周囲の人たちに認識されていると実感します。これまで仕事を機に転々としたアパート暮らしでは、一枚の壁を挟んだ向こう側に住んでいる人なんて知らなかったし、知ろうともしなかった。近くに頼れる人もいなければ、災害が起きた時に避難場所も知らない上、良くも悪くも地元もよそ者もない。

人口に比例するように、地域の濃度が異なることを身に染みて思います。昭和村民たちは、移り住んできた人をおおよそ放っておかないでしょうし、家同士が離れていても、どんな人なんだろうと気に掛け、また自然とこちらからも知っておいた方が良いだろうという気にもさせます。

昭和村の村民
この土地での生活や仕事を通して村内外の人と関わりを持ったことで、昭和村をはじめ奥会津地域の行く末を案じて行動する人が多くいるという事実を知りました。その多くは、自分の仕事を持ちながらライフワークのように地域の人々をつなげ、足を動かし、情報を発信しています。

その出会いのおかげで、遠巻きに目で見ただけの表面的な部分しか知らなかった自分の地元にも、必ず地域をもっと元気にしたいと考えている人や、水面下で行動している人、すでに奮闘中の人たちがいるはずだと思えるようになったんです。

3.思いがけず始まる化学反応。

自分が向いたベクトルには、面白いほどに情報が舞い込んで来ます。そして不思議と人と人を引き寄せ、思いの強さに比例するように、波及して予想以上の相乗効果を生み出します。

情報の取捨選択が大切だといわれる今の時代で、自分の選んだ物の日常から思いがけず始まる化学反応の末、また来年の梅が咲いた頃、どんな思いでいるのかが今から楽しみです。

(※この記事は、2019年3月28日に福島民報社にて掲載された記事の転載となります。)

◆第1回 『住めば都』。
◆第2回 『秘密基地づくり』。
◆第3回 『世代を超えて歩み寄る』。
◆第4回 『当たり前を疑う』。
◆第6回 『宝探し』。

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