【SHARE BASE 連載エッセイ】 第2回 『秘密基地づくり』。執筆者:株式会社SATORU 海野正輝

この連載では、福島民報社の朝刊にて6回に渡り掲載された株式会社SATORU 海野によるエッセイを、写真を交えて改めてご紹介させて頂く企画です。

第2回では、「SHARE BASE 昭和村」をつくる上での心境や乗せた想い、大人の秘密基地づくりという視点についてのお話です。

1.手先が不器用で雑な少年時代。

小さいころから手先を使う細かいことが苦手な上に飽きっぽく、何をするにも雑な仕上がりだったなと振り返って思います。

一方、母は趣味でトールペイントの講座を自宅で開くなど、手先が器用で美術的な才能に恵まれた人でした。兄も同様に絵を描くことや工作が得意で、小さなころによく工作を手伝ってもらったものです。

そんな私ですから、昭和村でDIY(素人が何かを自分で作ったり修繕したりすること。「Do It Yourself」の略)で古民家を再生し、人の集まる場所をつくろうと仲間と企てていたとき、ワクワクしつつも半分は不安な気持ちもあったのです。

2.やったことがない事もやってみる。

古民家再生DIY

修繕に取り掛かった古民家は、私の所属するSATORUの代表橋本浩寿の祖父母が暮らしていました。その昔、郷頭として地域を治めていたという長い歴史のある大きな家です。

長い間空き家となっており、風も通らず、シロアリの被害や毎年降り積もる重たい雪の影響で傾いていたりと、随所に傷みが見られました。手に負えない箇所の修繕は業者に依頼し、可能な限り自分たちの力で片付けや改修を進めていきました。見よう見まねで使った電動工具はいつの間にか手になじみ、臆せずに使えるようになっていきました。自分の担当する修繕個所はとことんこだわる。もしかすると、不器用だった自分のコンプレックスを克服しようとしていたのかもしれません。

古民家再生DIY
訪れた人が宿泊もできるよう、昨年6月に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)にのっとって民泊の届け出を済ませました。「皆で共有する秘密基地」をコンセプトにして付けた屋号はSHARA BASE(シェアベース)。

場所にちなんで「SHARE BASE 昭和村」とし、同年7月に営業を開始し、それまでの軌跡は、細かく自社のウェブサイトに書き連ね発信してきました。多くの方々から共感や応援の声をいただくことができ、大変勇気をもらいました。

3.自由な発想が育める、大人の秘密基地づくり

株式会社SATORU class=
小さいころ、家の近くの竹林に友達と集まっては、竹や木、拾ってきた物を集めて秘密基地づくりにいそしんでいました。男なら一度はあこがれる秘密基地づくり。あの頃のドキドキをまた体験することができるこの経験は、まさに大人の秘密基地づくりなのです。

ラブリコで間仕切り壁をDIY
ここを訪れた人に、「これ、自分でやったの?」と聞かれることがあります。仕上がりはプロに比べ雑なところもあるので、実は見ていただくのが恥ずかしかったりもします。それでも、「面白いですね!」と興味を持っていただいたり「こうするともっと良くなるよ!」と教えてもらったりすると、自信と元気が湧いてきます。
 
ここでは、住む人が家を守るのではなく、訪れる人やつながった思いによって守られ、進化を続けていきます。うれしいことに、観光だけではなく自分たちの取り組みや人となりに興味を持ってきてくれる人もいます。もっとうれしいことに、自分はこういうことをしていきたいという夢を語ってくれる人もいます。自由に過ごせる秘密基地で、子供のような自由な発想を育める、そんな場所であってほしいという願いが込められています。

(※この記事は、2019年1月25日に福島民報社にて掲載された記事の転載となります。)

◆第1回 『住めば都』。
◆第3回 『世代を超えて歩み寄る』。
◆第4回 『当たり前を疑う』。
◆第5回 『地元を想う』。
◆第6回 『宝探し』。

  

masaki umino
masaki umino
茨城県出身。大学卒業後、企業での営業経験を経て株式会社SATORUの創業メンバーとして参画。2017年に福島県昭和村へ移住後、地域活性化プロジェクト「SHARE BASE Project」で自社サービスの開発・運営・管理や各種ディレクション、webライティングを行っている。